シェアする落語 第16回 桂三四郎を開催するにあたり、事前に三四郎さんにインタビューをさせていただきました。集客用のページに使おうと思ったのですがあっという間に予約が集中してしまいましたので、一般には公開せず、一部をご予約頂いた方にメールでお送りさせていただきました。
せっかくですので、こちらでインタビューの全文を公開いたします。
取材は四家正紀が担当し、文責も四家にあります。
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※前回(5)

●自分には東京が合っている
 
これは笑福亭べ瓶兄さんと話していることですが、今の時代、落語家が落語をやる、いい落語をやるのは当たり前であって、落語家らしくない仕事をやらないといけない。タレントの仕事やったり、べ瓶さんみたいにお芝居やったり、僕は役者やるよりも書くほうが好きなんで脚本書いたり。
だって、うちの師匠もタレントとして売れまくってるし、僕の大好きな志ん朝師匠もお芝居もドラマもやってるし、談志師匠も落語家タレントのはしりというか、本書いてタレントやっててすごい。

落語家は落語やるのは当たり前。僕は何でもやりたいです。落語の外から落語を動かしたい。落語の外で学んだことをまた落語に生かしたい。大阪の落語家は割とそういうところありますよね。うちの師匠も文珍師匠も鶴瓶師匠もそうです。今の東京の落語家さんにはあんまり多くないかもしれない。
 
そう考えると、やっぱり東京のほうが有利です。受け入れ窓口が広い。大阪には落語家の道筋が2つしかない。お客さん集めて落語やる。もしくは、賞をとるかテレビに出る。これしかない。

東京はいっぱいある。テレビ局もいっぱいあるからタレントの仕事、ナレーションや声優の仕事もある。 ネット動画の番組もあるし、お芝居も多いし、いろんなパフォーマンスがある。出版社もあるから(立川)吉笑みたいに文章書けるやつは本も出せる。僕みたいな落語以外の仕事もやりたいタイプの落語家にはやっぱり合ってます。
 
東京に来て、まだ成功してるわけではないです。なんとか落語会をやれるようになっただけ。僕にはホームグラウンドがないですから。点々としてるんですよ。最初は道楽亭からで、吉本の劇場にもずっと出られるわけじゃないし。

東京の落語家には寄席があるじゃないですか。めっちゃうらやましいんですよ。前座・二ツ目・真打という階級制度がめっちゃうらやましい。昇進に向けて頑張ろうってなるし、ファンもそれに向けて応援してくれる。すごくうらやましい。僕らには入れないところですね。だから寄席とは違う僕の居場所を作らないといけない。もっとハングリーにならないとあかんちゃうか。ちょっと東京に慣れて来てるんで、もう1回ハングリーを思い出さないとあかん思うてます。
 
大阪にはほとんどいなかった同世代の落語家が東京には多いので、つながりができますね。 成金のメンバーとか。

ネタにしている「新作ラクゴナウ」という伝説の落語会があって、出演は仲のいい春風亭昇々・笑福亭羽光・立川三四楼さん。これが(お客さんが)10人入らなかった。三四楼さんが不思議な落語やって客がポカーン。羽光が三四楼さんに合わせてまた不思議なのやるから「なんかもう、わけが分からへん!」。そこで受付をやってたのが入門したばかりの立川吉笑。吉笑に「お前もラクゴナウメンバーやから」っていうと「覚えてないですよー。メンバーじゃないですよ!」って。昇々も覚えてないって。
 
巣鴨の「やみ鍋の会」に出させてもらったことがきっかけで、古今亭文菊兄さん、三遊亭萬橘兄さんとはよくご一緒しました。2人とも「菊六」「きつつき」で二ツ目のときから人気あって 東京にはすごい人がおるなあって。巣鴨には立川志の八さん、たまに三遊亭王楽兄さんも来てはりました。当時「きつつき」の萬橘兄さんとはしょっちゅうご一緒させていただいて。特にお世話になりました。あと、春風亭一之輔兄さんとも二人会やらせてもらったり。
 
その後、同じ巣鴨の巣ごもり寄席でこっちー(柳亭小痴楽さん)とも知り合って、僕の会「らくごの缶詰」にゲストで出てくれた神田松之丞とも縁ができて。TENのメンバー、なか鈴々舎馬るこさんとか。柳家花ん謝さんは僕の兄弟子・桂三幸の大学の後輩で、そんな縁でお付き合い始まって。

あと、今度また二人会やりますけど柳家わさびさん。三題噺やってるからこの人おもろいなーと。映画『落語物語』 も主演ですごいなー、一緒にやったらおもろい会ができるんじゃないかなーって始めました。いつの間にか人気出てましたよね。笑点の若手大喜利がすごくて、NHKにも出ているし。
 
やっぱりみんな「あいつおもろいなー」でつながります。みんな違う個性出してぶつかって、「あいつおもろい」で認め合ってる。みんな誓う個性で勝負している。シブラクや成金が盛り上がっているのも気持ちいい。みんな腕もある、個性もある。

ここで戦えるのは楽しい。切磋琢磨感がすごい。抜擢真打になりたいとか。そうやって成功している先輩もいるし。みんなワンチャンス狙って頑張ってる。正々堂々と戦ってる。でも助け合ってる。それが清々しい、爽やかですよ。
 
イベント『今夜も落語づけ』の3分間落語、若手が12人出て誰が勝つか分からない。勝ったのは(昔昔亭)喜太郎、えっ喜太郎!この前まで前座で使ってたのに、でもあいつ一番良かったなー、パーンてはねたなーって。
 
NHKラジオの「真冬の話術」では、こっちー(柳亭小痴楽さん)と(神田)松之丞と3人で決勝行って、松之丞が優勝。やっぱり松之丞は3秒でうまいの分かるからなー。
負けたのは悔しいなーと思いますけど。戦いが爽やかで。変なもやもやが残らない。
 
 
●頑張ってれば誰か見てくれてる
 
東京の寄席に呼んでもらうこともあります。最初に声かけてくれたのは三遊亭春馬兄さん。感謝しています。

寄席に出るのはうれしい。ステータスと言うか、本当にうれしいし、めっちゃ緊張します。新宿末廣亭・池袋演芸場・浅草演芸ホール、どこもめちゃくちゃ緊張するんです。呼んでもらってるんだから受けさせなあかんし、個性出さなあかん。でも行儀悪いことしたらあかんのかなと。神聖な場所に土足で踏み込んでめちゃめちゃにしちゃいけない。すごい緊張します。でもやっぱり出たい。
 
どっちかというと落語芸術協会のほうが縁があります。芸協と上方落語協会は空気がちょっと近いですね。(笑福亭)鶴光師匠もいらっしゃるし。 人数が少ない分、皆さんの関わり合いが濃い。桂文治師匠にもすごいかわいがられて、寄席や落語会に呼んでもらってたり、「お見立て」 を稽古してもらったり。桂枝太郎兄さんにもかわいがられてます。瀧川鯉朝師匠にも呼んでもらって。
落語協会の方にもお世話になってますけど、なんか、楽屋でバカ話してなさそうなイメージで(笑)。


(四家注:でも落語協会会長の柳亭市馬師匠にも可愛がってもらっているそうですよ) 
 
 
笑点特大号や新春特番の大喜利、若手大喜利に出るようになったのも寄席がきっかけです。文治師匠に呼んでいただいて新宿末廣亭の芝居に出たら、その日は女子中学生250人の団体が来ていて。皆さんちょっとやりづらそうだったけど、僕は吉本の劇場で若いお客さんにある程度慣れていたこともあって、自作の「MOMO」をやったら、たまたまめっちゃハネたんです。それを見ていたプロデューサーの方が寺田倉庫さんの落語会に僕を呼んでくれました。

そこに笑点の今の放送作家のSさんも呼んでくれたんです。幸いSさん「三四郎面白いね」と、1年くらいたって笑点のスタッフから僕のホームページ経由で声がかかって。Sさんが「三四郎面白いから」と笑点特大号に呼んでくれた。吉本が売り込んだわけじゃないんです。それまで笑点には上方の若手なんてほとんど出てませんでしたから、うれしかった。
 
東京のいいところは、頑張ってれば誰か見てくれてる。見てくれた人が声かけて来てくれること。
 
ずっと続いている「らくごの缶詰」という会も、東京に来てすぐのころに最初の主催者の方に声をかけていただいたのが始まり。その後、桂あやめ姉さんの会の打ち上げでお会いしたぶちこさんが手を挙げてくれて、主催を引き継いでもらってます。ぶちこさんもそれ以来「らくごあそび」とか、他の落語会も仕掛けてて、いい感じですよね。頑張れば縁ができるのが東京、だからみんな頑張るんですよね。
 
もう、いろんな方に助けられて。縁でなんとか生きてきた。だから縁をつないでいく努力は怠らないとあかん思います。

今回「シェアする落語」に声かけていただいたのも縁だし、すごくうれしい。どんどん声かけていただきたい。あ、吉本のことは気にせずに、どんどん声かけてください。


(つづく)

(取材2017/03/19 取材・文 四家正紀 写真 常山剛)