シェアする落語 第18回 三遊亭わん丈』を開催するにあたり、事前にわん丈さんにインタビューを実施しました。一部はご予約特典としてメール配信させていただいています。

せっかくですので、こちらでインタビューの全文を公開いたします。
取材は四家正紀が担当し、文責も四家にあります。
(前回)

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NHKなにジェネ? キックオフイベントの司会 撮影:四家正紀

●見習いのころから作り始めた新作
新作落語を作り始めたのは、まだ名前も貰っていない頃です。(三遊亭)ふう丈兄さんと二人で見習いとして師匠の家に通っていたときてすね。
最初に作ったのは『情報ラッシュアワー』という噺で、これはもう典型的なダメ新作で落語になっていない、コントみたいな噺でした。時間が落語的に進まない、ずーっと並列でゴールに向かっていない、テレビ的でその上理屈っぽい。
実はそのころ古典落語を『八九升』ひとつしか習ってなかったんです。落語のなにもかもが分かっていなかった。
師匠が宿題を出します。「時計」で四つ作ってこい、とか。ふう丈兄さんは前に芸人の経験もあって、作れたんですね。師匠からは「君は作れないね」と言われました。
感覚でやってちゃだめだと思ったので、ふう丈兄さんの作った噺をメモって、うちに帰ってから自分でバラしてみたんです。そしたら当時兄さんは毎回4つのパターンを使って作っていることが分かったんです。で、僕も真似して、この4パターンで作るようにしたら、師匠から「作れるようになってきたね」って。ここで一つ、成功体験を収めました。
師匠は僕に「お前は喬太郎になれ!」「白酒になれ!」って言われてました。円丈一門でも古典の落語家としてやっていってもいい、ただこれからの落語家は新作を作る能力がないと生きていけない。喬太郎師匠や白酒師匠は新作を作れる。作れる上で古典に入れ込んでいる。お前は彼らのようになれ、と。


つぎに、一つ古典落語を覚えるたびに、その落語の構造を使って小噺や新作落語を作るようにしてました。

初めてネタおろしした新作落語は、今でも掛けている『プロポーズ』というネタなんですが、これは『子ほめ』を習った時に作ったものです。いまはちょっと縮めてやってますが、最初のころはフリに対するオチや、ギャグの分量も全く同じでした。
もうひとつ、今でもよくやる『國隠し』も前座の時に作ったものです。これは『桃太郎』がベースになっています。『やかん』をベースにしたのは『完璧』これなんかほんと、やってることは『やかん』です。

上岡龍太郎さんや島田紳助さん、松本人志さんを浴びて育ってきましたので、ギャグは作れる。だけど落語の型をちゃんと使わないと、落語にはならなかったんです。そこで古典落語を基にして、自分のアイディアを入れる形で新作を作り続けました。そのうち『自殺屋さん』のような、古典落語を下敷きにしていない噺もこしらえることができるようになりました。

今は古典で受けているなら無理に新作作らなくてもいいんと思っているんです。どうせ作るなら古典ではできないことをやらないといけないと思っています。
たとえば『國隠し』に出てくる「属国理論」は古典落語に出てこない。あと古典落語に出てくる子どもが、僕にはどうも面白く感じられなくて。これだったらクレヨンしんちゃん見てたほうが楽しい。だから「バカな両親の間で仲裁する賢い息子」という、古典にはない、新しい子どもキャラをつくってみたら、そんなにギャグを入れなくてもけっこう受ける噺になりました。このレベルまでやらないと、僕が新作をやる意味はないと思っています。


(つづく)

 (取材2017/06/10 取材・文 四家正紀)

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