『シェアする落語 第16回 桂三四郎』を開催するにあたり、事前に三四郎さんにインタビューをさせていただきました。集客用のページに使おうと思ったのですがあっという間に予約が集中してしまいましたので、一般には公開せず、一部をご予約頂いた方に原稿の一部をメールでお送りさせていただきました。
せっかくですので、こちらでインタビューの全文を公開いたします。
取材は四家正紀が担当し、文責も四家にあります。
※前回(6)
●今度は後輩を助けたい
話は戻りますけど、大阪にいたころは、大阪のスター月亭八光兄さんにめっちゃかわいがってもらいました。 あと、実は東京に出てくるときに、同じ吉本の月亭方正さんにめっちゃ相談しました。巣鴨のやみ鍋の会にも誘ってくれたのも方正さんです。もちろん吉本にもずいぶん助けてもらったし。恵まれてます。
だから僕も後輩を助けたいと思うけど、まだまだ自分のことで精いっぱい。
あ、でも新宿末廣亭の「四派で深夜」に上方枠ができて「五派で深夜」になったのは、僕の提案です。(春風亭)吉好に頼みました。俺どうしても出たい、なんとかしてくれへんか、五派にしてくれへんかって。吉好が動いてくれて、五派にしたら、お客さんは倍になった。大成功。企画提案して良かったなーって。
そしたら大阪の若手が東京に来て落語会やるときに「五派で深夜」で新宿末廣亭に出られるようになった。これはすごいきっかけを作ったことになりますよ。もっとね、功労者として讃えてほしい(笑)。大阪の人間、もっとありがとうございましたと言うて来いという気持ちはあったりします(笑)。大阪の落語家が新宿末廣亭に出ると、うれしさもあって、ちょっと意欲的になるんです。東京の落語家にも刺激になると思うし。
東京で落語会を開いたり、仕事をする上方落語家はずいぶん増えましたけど、これからもっと増えると思います。東京は仕事の間口が広いから席の取り合いがないんです。
ただ、僕みたいに移住してくる人はまだいないみたいで。 まああと10年は来なくていいです(笑)。まだちょっと面倒見る余裕はないんです。ちょっと今来られても、どきどきしちゃいます。今来たいというやつは、ちょっと岐阜羽島のあたりで止めとかんと(笑)。
●動き続ける。そして総合芸術の夢
去年は新作落語14本作って、古典落語8本ネタおろししました。ネタおろしはめちゃめちゃ緊張しますけど、これだけやってみると今度は前から持ってるネタやってもなんか、刺激がないんですよ。
1年前と今で、自分のなかの感覚が全然違います。見えへん力が付いてくるんですね。そういう力をもっとつけたい。大御所の方々はみんな修羅場くぐって来てる空気があります。笑点の師匠方は大喜利で普通のことを喋ってもどーんと受ける。いろいろ叩かれたり苦労したりしながら40年間やって来て作った空気は、もう一朝一夕では絶対追いつけない感じです。
行動しないとだめですよね。動いていたら縁がつながって、笑点にもつながって、出てみたらわさびさんすごいし面白い。馬るこさん面白い。もう頭いいし、よく考えてますよね。そんで出てるメンバーみんなが、もっと上を狙ってます。新しいメンバーが来たらちょっとピリッとします。ええ刺激になりますよ。危機感を持たないと、飢えてないとあかんのやろなと。もっと自分を飢えさせなあかん。そろそろまた新しいことやりたい。
「新しいこと」ということで将来の目標なんですけど、総合芸術的なことをやりたいなあと。最初、落語とオーケストラの融合みたいなことを考えていたら、ある指揮者の方から「それ、やったことある人結構あるよ。クラシックだっていろんなジャンルがあるんだから、なんか新しいジャンルを作るようなことやったら?」と言われて。そりゃそうやなあと。
いろんな縁をつなげていただいたおかげで、落語家も講談師も浪曲師も作曲家もオーケストラの方々ともつながってるんです。僕が今まで見て来た面白いものを全部ぶち込んだ総合芸術的な何かができないかなと。まだまだ漠然としたアイデアですけど、音楽あって笑いあって落語も講談も浪曲も歌も舞台美術も…。今まで見て来た面白いものを全部入れたい。夢ですね。
こんな夢のために、頑張って縁を広げてきたんかなあと。これからもっと頑張って、動いて、何でもやって、縁を広げていきたいです。
(取材2017/03/19 取材・文 四家正紀 写真 常山剛)